ヘルタースケルターの原作者について

前回のページでは、ヘルタースケルターという漫画がいかに漫画という枠組みを越えた、傑作であるかということについて解説してきました。そこで今回のページではヘルタースケルターについて、作者の人間像に迫り、そこに見えてくる作品とのつながりについて解説していきたいと思っています。

ヘルタースケルターは前回のページでも述べたように、元々は雑誌に連載されていました。連載時からすでに名作と呼ばれていたヘルタースケルターですが、その後、作者が事故に遭い、作品はしばらくお蔵入りとなりました。作者が事故から奇跡的に一命を取りとめ、リハビリに入ったことでヘルタースケルターは単行本として刊行されました。単行本は雑誌で読んでいなかったファンにとってはもちろん、すでに読んでいたというファンにとっても歓迎され、瞬く間に増刷を重ねる結果となりました。

作者はそれまでも様々な作品を世に送り込み、その都度、社会的な問題提起を作品を通して突きつけるような内容の漫画を書き続けました。ヘルタースケルターに至る作品群の中でもピンクという作品は作者の真骨頂を描きました。ピンクの作品中で、部屋の中でワニを飼う女性を描き、自分にとって都合の悪いものは全部ワニに食べさせてしまえば問題は解決するというストーリーを描きました。世はまだバブルの余韻の残る頃で、全てを食べつくすワニは、大量消費を礼賛する時代を象徴する存在と言えるのかもしれません。

リバーズ・エッジという作品は、ヘルタースケルターに比較的近い内容の作品となっています。そこでは、デカダンスに耽る若者たちが描かれ、そこに描かれた内容は、当時の若い小説家やミュージシャンにまで影響を与える作品となりました。そこに描かれた世界は、今でも充分に通用する普遍的なものと言えるでしょう。

これら一連の作品は、今回のヘルタースケルターに至るまでの作者にとっての作品としての完成度を表わすのとともに、作者自身の精神面においても大きな変化を如実に語っていると言えるでしょう。それでは次回のページでは、ヘルタースケルターについて、作品名そのものを掘り下げていきたいと思います。作品タイトルの意味や、裏読みすることで見えてくることなどについて解説していきましょう。