前回のページまではヘルタースケルターについて、作者のビジョンがどのように作品中に生かされているのかについて、様々な考察をしてみました。作者が自動車事故に遭ってしまった以上、どこまで考察しても、何が正解とは分からないわけですが、作品に込めたテーマや思惑などを語る作者は、もともと少ないものです。作者は作品がどのように読まれ、解釈されたとしても、文句をいえないというのが表現者としての鉄則と言えます。それでは今回のページでは、ヘルタースケルターという作品がこのたび映画化されることとなりましたが、どういったキャストが演じるのかについて詳しく解説していきたいと思っています。
ヘルタースケルターで描かれている世界観に「破壊」というテーマが最も色濃く出ています。それは登場する人物たちの肉体であり精神面においても、常に激しくぶつかり合い、そして傷つけあい、さらには破壊されるという展開が数多く見受けられます。
作品中に漂う気配、それは「死」とも言えるものかもしれません。全ては無に帰すものとして、そこに存在するもの全てがこわれてゆく予感が、そこには描かれています。ヘルタースケルター通して描かれる世界には、ある特徴があります。それは「スピード感」です。全体を通して駆け抜けるような圧倒的なスピード感が、ヘルタースケルターという作品全体を通じて描かれていることは、誰もが感じることと思われます。
漫画には主人公が登場します。主人公は美しい女性で、職業は人気絶頂のスーパーモデルとして描かれています。彼女は作品中でこのように語ります。自分自身の体に徹底的に手を入れることで、理想的な体を手に入れたと言います。美容整形は全身に及び、生まれたままの体で維持できている部分としては、目の玉と骨と爪と髪と耳、および女性器だけは元のままだとヘルタースケルターに登場する女主人公は言います。
そのような主人公にとって、幸せや生き甲斐とはなんなのか、作品中で主人公自身が自問自答を繰り返す中で、そのメッセージは読者にも共有されます。そういった奥深い見どころがたくさんあることもヘルタースケルターの大きな魅力だと言えるでしょう。次回のページではさらに深く掘り下げていきます。